カプアス川はシンタンでカプアス水系最大の支流、ムラウィ川と合流する。
ムラウィ川はカプアスの南側を並行するように流れる、西カリマンタンと中央カリマンタンを隔てる険しい山脈を源流とする川で、カプアス水系中もっとも分け入るのが厄介な支流の一つである。
上流部には未だ原生林が残されてはいるが、それも今現在激しい伐採で急速に減少しつつある。
シンタンから約50km南のナンガ・ピノの村までは危なげな道があるにはあるが、それより上流部への道はない。伐採木材の運搬も水上路を頼ることになる。
今回はシンタン周辺調査なのでシンタン〜ナンガ・ピノ間を見ていくことにする。このシンタン〜ナンガ・ピノ間はムラウィ水系ということになる。
ナンガ・ピノまでの道のりは、たかだか50kmほど、しかしその荒れ果てた道は想像以上に疲れる。
実はこの道は1999年にキレーイに舗装されたばかりなのだ。その時は「おーっなんと気持ちの良い爽やかな道だ!」と思ったんだけど・・・
去年2001年にナンガ・ピノへ訪れた際には、もう既に激しく穴ボコだらけ、半オフロードの荒れ果てた道へと変わり果てていた。
シンタンから1時間かからずに行けたナンガ・ピノへはいまや3時間走ってもまだ着かないのである。
結局、水はけの悪い場所にいくら上から土砂やコンクリを被せても無駄なのだ。根っこから崩れていく。
こんな道から入れるベタがいそうな細流は、予想できるがやはりかなり荒れ気味である。
開墾の際、伐採した小中木などが河川に投げ込まれていたりして採集もしずらい。
だからまず状態のいい細流を探すのが、第一条件になってくる。
しかしこれがなかなか無いんだよ・・・。それよりこんな道ではバイクが壊れるほうが心配だ。
まあ晴れていたから良かったものの、雨が降ってぬかるんだら何度ひっくり返るか分かったもんじゃない。
ピンポイントで道端の小さなスワンプから、アナバトイデス?を採集した。でかっ!
アナバトイデスか!?
またさらにバイクを走らせると、道からはほとんど見えないのだが、クリプトコリネが生えた少しはまともな細流がある。
ここは以前にも訪れたことのある場所で、sp”シンタン”がかなり高密度で生息している。
今回も標本を再度取り直すためにここへ来てみたが、生息地がまだ失われていないのを見てホッとした。
こういう良い環境が整った川を探し当てるには、結局しらみつぶしに川を覗いていくしかない。
生息場所はクリアウォーターに近く、若干薄濁っている。川の底は落ち葉が積もっていて、その下が主な生息場所になっている。
クリプトも生えているBetta sp. "Sintang"生息地
採集したオス、卵咥え中!
sp”シンタン”はうちのHPでsp”カプアス”としているベタと、おそらく同種か少なくとも近縁であることは間違いない。
体型はかなり細長く、頭部もかなり尖った感じがある。
オスのエラブタや体側にはインディゴブルーのような濃い青がのり、尻ビレのエッジも青くなる。
腹ビレはそれほど長くはならず先端は白色。
尾びれはあまり色彩がのらずエッジがほんの少しだけ色着く程度でラウンドテール。
ただ個体差なのか尾びれの膜に薄いパステルカラーがのる個体も見受けられる。
メスはオスに比べると地味だが、やはり尻ビレは多少青くなる。体側の縦ラインもメスのほうが明瞭に出る傾向にあって、体側の黒ラインは3本、真ん中のラインは目を通り越して口先まで、一番下のラインはエラブタを通り越して口元まで伸びる。
このようなラインの特徴はグループ的にはピクタに近い感じがするのだが・・・。
最大体長は8cm程と小型の部類に入るかもしれない。
オス個体、最高潮の色にはまだ程遠い
メス個体
しかしこのベタはカプアス水系の中でも特にわかりづらく分類しにくい種類だと思う。
とにかく僕はこのベタのことでたくさんの時間と労力を費やしたが、いまだこのベタについて把握しているとはとても言えない状況なのだ。
同じ生息場所ではスカダウ近くで採集したaff.タエニアータによく似たベタも採集することが出来た。
この後もあちこち見て回ったが、あまりいい状態で採集できる川が少なく引き返すことにしたが、
sp”シンタン”についてはこれからも採集調査を続けていくつもりである。
[シンタンから上流方面へ]
[シンタンから下流方面へ]
[シンタンからナンガ・ピノ方面へ]
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