広西チワン族自治区採集記T

今回はちょっと行き先を変えて中国へ行ってきた。
中国の友人が「中国内で未記載種らしきクリプトコリネが見つかった」というのだ。 それは2010年、つまり今年になってからである。
中国といえばクリスパチュラくらいしか思い浮かばないが・・・その画像を見て驚いた。
こ、これは・・・!

ちょうどそのクリプトコリネの見つかった地域へ魚の標本を採取しに行くというので、今回同行させてもらった。 中国人の彼とは一緒にカリマンタンへ採集旅行へ行ったこともある仲である。
彼は根っからの魚好きで、以前は中国で熱帯魚のシッパーをやっていたこともあり非常に魚に詳しい。最近になって美しいヨシノボリも発見したという。このヨシノボリは2009年に新種として記載されたそうです。
今回はその新たに見つかったクリプトコリネの採集記であるが、現在ヤコブセン博士らによる分析・鑑定が行われているので、どういう種に分類されるかの結論はまだ少し先の話になります。
今回の旅は友人の協力なくしては実現しなかった旅であり、惜しげなく僕を案内してくれた彼に感謝の意を表したい。謝謝!

夜遅くに香港に入った僕は空港からすぐさまA43のバスに乗り込み水上へ向かった。 さらに水上からタクシーに乗り換え皇崗口岸へ向かい香港から中国本土へ入った。
香港から中国本土へいくつかの入り口があるが、24時間オープンしているのはここだけのようだ。 中国本土へ越境するとそこは広東省、深せん市である。

深せんの夜景。高層マンションが立ち並ぶ。

国内でも非常に所得の高いエリアではあるが香港よりは物価が安いらしく、香港人はわざわざ深せんのスーパーまで買い物に来るという。また通勤で毎日、深せんと香港を行き来する人も多いという。
びっくりするのはマンションの高さで、20〜30階は当たり前である。そんなマンションがズラズラとそびえたっていて人がびっしり住んでいる。
そしてもう一つびっくりしたのが電動バイクである。スッーと走ってくるので気がつかない。 バイク自体は中国ならではという感じの車体だけど、それがみな電動で走っているというエコさのギャップが面白い。
ちなみにこの地区では普通のエンジンバイクは禁止されているらしい。

僕らはこの深せんのバスターミナルから広西チワン族自治区へ行く夜行バスへ乗り込んだ。
バスは寝転がれるような寝台が2段になっていて割と快適な旅ができる。カリマンタンと比べれば天国のようなバスである。 多少渋滞した高速道路を12時間ほど走り、朝食を食べ、さらにバスを乗り換え先へ進む。

中国ぽいなぁ・・・

このあたりは石灰岩のカースト地形であり、訪れた時は霧雨のような日が続いたためとても中国的雰囲気のある景色だった。
目的の街まで着いた僕らはさらに三輪タクシーをチャーターし、近くの村までいった。 この村の川で採集するという。

村人に魚の情報を聞き、川での採集の断りを入れると手伝ってくれるという。彼らは車用のバッテリーを出してきた。電気漁である。
本来中国ではこのような漁法は禁止されているらしいが、川を見て納得である。この環境では手網も投げ網も使えない。釣りでは効率が悪すぎるし・・・

魚の種類が豊富

彼らは売るために採るわけではなく自分達が食べる分しか採らない。海の魚が手に入らない地域だから川魚は貴重な食料である。 これをだれが悪だと言い切れるだろうか・・・。
また実際やってみてもらったが、魚は一旦気絶して網で簡単に掬うことができるが、水中に入れておけばほとんどが復活してまた泳ぎだす。網で掬いきれなかった魚も復活して泳ぎだすだろう。
魚相はびっくりするくらい豊富だ。それほど大きな川ではないから大型魚は採れないが種類は多い。 魚の画像はTEAM BORNEOブログの方へ少しづつアップしているのでご覧ください。

この川辺でCryptocoryne crispatulaを見つけることができた。 最初に見つけたのは水上株である。
※クリスパチュラはバリエーションがいくつかあり、パッと見て判断できるほど簡単ではありませんので、ここでは同定しません。
※便宜上このサイトではこの川のクリスパチュラをcrispatula"Guangxi2"(読みはグアンシが近い)と記述することがあります。

水上株のクリスパチュラ"Guanxi2"。葉も花も長さは10cmほど。

近くで見つけた有茎水草

葉は細く小さく(5cm〜10cm)明るいライトグリーンで花も多数咲いていた。水上葉はほとんど凹凸がない。 水上といっても雨が降り増水すればすぐに水に浸るであろうくらいの場所だ。

次の日の朝、前日より上流側へ移動すると再度水上株、そして本流の流れの中に水中株も発見。
川床は大小の石、硬い砂利に覆われていてクリプトコリネはその岩の隙間、砂利深くにまで根を伸ばしている。
完全水中株は葉長が20〜30cmほどあり、一つの群落に緑色の葉もあれば赤味の強い葉の株もあった。 葉はボコボコと凹凸があり、葉幅は1〜2cmほどある。

流れの中のクリスパチュラ。偏光フィルター忘れた・・・見づらい^^;

見ずらいと思いますが、水中でも花が咲いています。水上株の花とはだいぶ違う。

赤味の強い水中株(crispatula"Guangxi2")を引き上げてみた

採集用にと日本から小さなスコップを持ってきたが宿に忘れてしまった。 指で砂利を掘り返すが、非常に硬く根が深いので引っこ抜くのも容易じゃない。イタタタ・・・
水上の株の花と、水中の株の花とでは大きさも色もかなり違うことに注目できるが、 水上株も同じように水中に沈めれば同じような葉、花の形質を表現するだろう。 半水中といった感じの株もあったが、これは水中株と水上株の両方の特徴を持つ中間的なものだ。

岩の裂け目に生えていた半水中株

半水中株

この川はかなり開けた川であり、晴天時にはクリプトコリネにもガンガン直射日光が当たるだろう。 それを考えると人口育成下でも明るめの環境がよいかもしれない。
水質はPH7.1、GH7、KH6であった。 水温は未計測だが僕の見立てでは22度前後とみた。笑
さてパートUに進みます。

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