この魚を今回(Sep/98)ひょんなことからラッキーにも見つける事ができた。
さて、どうしようかなー。五枚に分けられているボルネオの地図をはり合わせて一つの島にして考える。
南か、東か。マハカム川へ飛んじゃおうか。どっちにしてもこの季節外れの大雨、カプアス上流の洪水を思い出すと気が重い。
そんな時、僕のインドネシア人の友達が言った。
「僕は中学生の時までサンガウ地方に住んでたんだ。その時体やヒレが青く光る魚を見た事があるよ。」
ほっほーゥ、青く光るねぇ、ラスボラかもしんない。ベタだとしたら何だろう。
フォーシィタイプのベタがこの辺までいるのかもしれない。うん、よしそこちょっと行ってみよう、わりと近目だし。
僕らはさっそく村へ向けて出発した。この辺は山あり谷ありで起伏が多い。山林地帯って感じだ。
村の目の前にはスカヤム川が流れている。
僕は村の青年を二人連れてジャングルへ入った。地形からも大体分かるが、
この辺の小川には大きな岩や滝があったりして日本の渓流に感じが似ている。
森のエキスが染み込む時間も無く、水の流れは速く透明できらきら輝いてる。でもこういう川はあんまりベタいないんだよね。
三日間、成果の無いまま、それでもジャングルをあても無くさまよい歩く。
そしてひとつの小さな流れに出合った。他にも小川はあったが激しい雨の影響で増水し、採集がやりにくい状態だった。
それにしちゃあここは全く増水している様子が無い。いや乾季には一切水が無くなってしまうのかもしれない。
僕らは流れを伝い上へ上へ向かっていった。
この小さな小さな流れにはクリプトコリネが生えていて、水の流れがあるところは川底がむき出て石ころがゴツゴツしてる。
生息地に生えるクリプトコリネ ストリオラータ
(鑑定:レヨンベールアクア)
左側の岸側にストリオラータが・・・
流れの緩くなったところは泥がドロドロ...あ、足が抜けません隊長!いや足は何とか抜けたが、ビ、ビーサンが抜けん!苦・・・!
哀れビーサンは泥の中で暗い一生を過ごす事になった。
そんな悪戦苦闘をしている僕の目の前に、一匹の魚が水面に上がってきてまた、泥水の中に沈んでいった。
水面に息を吸いにきた・・・ムムム。次の瞬間、僕の網は柄がもげそうになるほどの泥を満々と湛えて掬い上げられた!
それを流水に浸して泥を洗い流していく。
さて、何が出るかな?何が出るかな?この瞬間がたまらなく好きなのだ。
それは子供の頃から、北海道の大自然で遊んでいる頃から変わらない。何かが泥にまみれうごめいている。
もうちょっとだ。さあいったい何が採れたんだい?その瞬間、僕の全身の細胞一つ一つにまで衝撃が走る。
「ナニ!spサンガウ!!」
こいつを前から探してたんだ。
でも見つからなかった。前もサンガウ周辺を結構探したけどそれらしいのは見つけられず、
本当にサンガウ地方にいるのだろうか、他にサンガウという地名があるのかも、と疑ったヤツである。
ほんとにいたんだ、spサンガウ。なるほど、こんなとこに隠れてられちゃあそう簡単には見つからないわけだ。
しかし彼は、「これだったけかなぁ、もっとヒレが青かったような・・・。」と首をかしげている。
それを聞いて僕は内心ニヤっとした。この辺にはまだ何かいるのかも・・・。
なぜか細流の源頭付近に集中的に生息していたぞ!
その後、このベタは輸送(水温変化、アンモニア濃度の上昇や激しい振動など)に弱い事が判明。
移動の際、他のベタはピンピンしてるのにこのベタだけ全滅した。しょうがないのでまた採りに戻るはめになった。
しかし、僕も体の調子をだんだんと悪くしていた。動くのがだるくてめまいまでする。
そして、とうとうspサンガウが泳ぐ小川のほとりで、ヒレを閉じたベタのように動けなくなってしまったのだ。
spサンガウのたたりか、それとも泥中に見捨てたビーサンの呪いか。
その時はまだ、自分が恐ろしいマラリアにかかっていたとは思ってもいなかったのである。
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