スカマラ採集記2006V

トゥンバンティティでフォーシィタイプのベタを見つけて気分を良くした僕は、急ぎ足で次の目的地のスカマラへ向けて出発した。 二人乗りのバイクでManis Mata(マニスマタ)まで行き、さらにそこから乗り合いのスピードボートでスカマラへ向かう。
マニスマタと聞けば、ん?と思う方もいるだろう。 そう、かつてジャイアントリコリス、アラニーUなどというインボイスで入ってきたリコリスの産地なのだ。
マニスマタはキャッツアイやクリスタルなど様々な石の一大産地でもある。

マニスマタへたどり着いた僕は今度はすぐさまスピードボートに乗り込んだ。今日の最終ディスティネーションはスカマラなのだ。
乾季で水位の下がった川をスピードボートは下る。 しっかしへこたれそうな陸路と比べると水路は天国じゃあ!ボートは素ん晴らしいスピードで水面を滑ってくれる。
よく「陸路では到達できない辺境の奥地」なんてフレーズを使ったりする事があるけど、カリマンタンじゃそんな場所はいくらでもある。 陸路より水路のほうが百万倍快適で速いのだ。
それは言い換えれば「辺境のパラダイスへ続く輝ける水路☆」があるってことだ。

ボートの運ちゃんは、一見なにもなさそうに見える水中に沈んだたくさんの流木の位置を全て覚えていて、突如急ハンドルを切ってボートから振り落とされそうになる。 ナカナカの職人技だ。そのクセ、ガソリンを入れ忘れてガス欠・・・。
なんでカリマンタンの人間はいつもガソリンを入れ忘れるんだろうねぇ・・・不思議でしょうがない。
2時間川面を漂ったあげく、そこらで拾った木の枝でモータボートを進めようとするバカバカしさ。そう、それがカリマンタンという所なんだよねえ。苦笑

スカマラを訪れたのは何年ぶりかな?4年ぶりだったかな? 4年前に船着場で出会った少年は、青年になっていたけど同じ船着場にいた。
「あ、あの男の子!4年も経ったのにまだ同じ場所に座ってる・・・」
彼もすぐさま僕に気づき、そして自分のTシャツを指差した。そうそう、彼が僕の着ているTシャツを欲しがったんで、あげたんだよね。
子供とはいえ知っている顔があるとちょっとした安心感があるね。この子に会ったおかげで、今日ここへ日本人が来たこと、 その日本人は魚を採りにきたことはすぐに村中に伝わるだろう。

スカマラの朝、村からオジェ(バイクタクシー)を雇って北へ向かった。ストローイの生息ポイントを探し出すぞ〜!

フォーシィタイプのベタが生息する「森の感じ」っていうのがある。
森の中に入ってしまうとちょっと分かりにくいが、外から引いて森を見るとここら辺にいるなって分かる。 どこがどうってハッキリ言えないんだけど・・・。
木の高さ、太さ、種類、地形、生えてる草、土、水の色、流れの速さ、そういうものの組み合わせで「森の感じ」が決まるんだと思う。
あとは現地人をひっ捕まえて、森の中のチョロチョロ流れを聞き出せばオッケーだ。

「ディミディアータの森の感じ」、「ブルディガーラの森の感じ」、「アントニーの森の感じ」、ベタによってそれぞれ森の感じが違うから、森を見ればどういう種類がいるのか大体分かっちゃう。
本当ならそういう「感じ」をもっと科学的に説明できればいいなあと思う。 もしベタの種類ごとにそういうデータが集まっていれば、将来すごく役に立つと思うんだな。
僕はベタはある意味で環境指標生物になり得ると思っていて(汚染度の指標生物ではなく)、例えば、ここには昔こういう種類のベタがいたから、こういう森を復活させればいいとかってね。 といっても自分じゃ植物の分類、地質、環境・景観までとても手に負えないしなあ・・・。
まあ、インドネシアが森を復活させようなんて何十年先の話だか分かったもんじゃないけど。 とりあえず今の僕は、ベタの種類と生息地のGPSデータを収集しているわけだ。

話がそれてしまったけど、僕は現地人をひっ捕まえて新しいストローイの天国を見つけ出した。生息地から上流側へ10m進めばそこはもう流れの始まり、つまり湧水である。

スカマラのベタ・ストローイの生息地(すぐ上流側で水が湧き出ている)

そしてそのストローイの生息地には何とも嬉しいオマケが付いていた! クリプトコリネが生えていたのだ。しかも明らかにコルダータとは違う、短くて太い花が立ち上がっている!
水深は5cmほど。固めの砂質にがっちりと根を噛ませている。この種類は一体何だろう・・・ハイブリッドだろうか?

ベタの生息地でクリプトコリネ発見!これは!?

おおっっ!なんだこの花は!!?

別個体の花写真アップ

PS:僕は後日このクリプトをバスメイヤー氏に送り、詳細を調べてもらった。
まだ完全に結論は出ていないが、Cryptocoryne cf.edithiaeとしておくのが妥当だろう、ということだそうだ。 これは大変ラッキーで貴重な発見だ!

スカマラで見つけたクリプトコリネの花の写真

スカマラの探索はナント半日。宿に戻り、急いでパッキングしてすぐさまスピードボートにのり込み、マニスマタへ戻った。
時間がない。もう日程がギリギリなのだ!

[back]