ナンガタヤップで採集を終えて北上する予定だったが、どういう訳だか海辺のスカダナ(Sukadana)という町に出ることにした。
ナンガタヤップからバス(屋根)に乗り、海辺のシドゥ(Siduk)で右手に曲がり30分くらい走ればに着く。
しかしスカダナに着いたはいいがやはり宿は無く、少し先の北にあるトゥルク・メラノ(Turuk melano)に滞在することになった。
メラノの町から南東の方角にはグヌンパルンという山があり国定公園になっている。
ここの山にはオランウータンが棲んでおり、これを見に訪れる白人の観光客をたまに見かける。
少し前のナショナルジオグラフィック誌に飛ぶカエルの記事が載っていたが、そのカエルが撮影されたのもこの公園なのだ。
いや〜しかしここのロスメンの雰囲気はあまり好きじゃないな〜。
まあここしか無いらしいから仕方ないだろうな。夜になるとそのいやな雰囲気の意味が分かってくる。
ロスメンの前にはカラオケバー・・・夜な夜なインドネシアンのシャウトを聞かされることになるのだ。
しかも歌う歌といえば今だにガンズのスウィート・チャイルド・オブ・マインとか・・・
オメーら、カラオケの使用料払ってんだろうな〜?
で、そういうロスメンには決まって、エッチなことをしてくれるブサイクなオネーサンがいるがお世話になったことは無い。
宿のオヤジは非常に顔が怖いが、でもバイクを安く貸してくれたりとか、ベタが採れる場所を教えてくれたり、見かけの割には案外優しいのだ。高校生のドラ息子もいる。(ボロくそだな・・・)
シンパン川
この町はシンパン(Simpang)川の河口にある。橋を渡ってすぐだ。
この川は僕にとって、非常に重要な水系になっていた、というのはここへ来る前に南側のパワン(Pawan)川でセラタを採集したからだ。
どういうことかというと、このシンパン川はカプアス川(チョコグラ)とパワン川(セラタ)に挟まれた位置にある。
この水系にどっちの種が生息するにしても、この川を境に種が隔てられているのだ!
これは僕が前々から疑問に思っていたことだ。チョコグラとセラタの生息エリアはどこで分かれるか!?
その答えがこのシンパン川にあるのは確実なのだ!
さて、宿のオヤジにバイクを借り、オヤジが教えてくれたベタの生息地にさっそく採集に出かけるのだ〜!
場所はロスメンからすぐそばだ。目の前の通りをとにかくまっすぐ行けと言う。
おお、あるぞあるぞ。ブラックのいい色じゃないかあ。
こんな環境だから赤ベタやスファエリ、リコリスを期待したのだったが、ダメであった。
雨続きも影響して比較的水量も多くなっているようだ。採れたのはエディサエだけだった。
しかしあれだなあ、採れたっていうのに、「ダメだった」といわれてしまうエディサエの立場って・・・。
別にエディサエがどうでもいいという訳ではないが、この水系がチョコグラなのか、セラタなのかということに興味があったので。エディサエの生息は最初から予想していたものであったという事だ。
同じ意味で赤ベタとリコリスには大きな意味がある。この地域がカプアス川の地域に属するかそうでないか大体分かるからなのだ。
もしボルネオの地図を持っているなら、是非確認してみて欲しい。種類ごとにベタやリコリスの生息地域を地図上で分けてみよう。
するとあるパターンのようなものがあるのが見えてくるはずだ。こういう楽しみ方もアナバンにはあるということですね。
これを考察するのはなかなか面白いですよ〜。
そしてもし皆さんの中に、こうこうこういう理由で、ここにはこんなベタやリコリスがいるはずだ!
という妄想好きの方がいれば是非意見を聞かせて頂きたい。僕がそこに行ってその夢のベタを採集してきましょう!
グヌン・パルンからのやや流れのある川
さて毎日雨が続き成果を出せないまま、つかの間の晴れ間を狙って採集に出かける。
僕はスカダナ方面へ戻りつつ探りを入れることにした。
スカダナ方面へ道を行くと、グヌンパルンを源流とするクリアウォーターの水に変わってくる。
感じ的にはラスボラやスリースポットという感じで、チョコグラが期待できそうな感じではなかった。
現にチョコグラの類は全く採集できず、もはや別の何かがいないかと脳みそとギアをシフトしつつバイクを吹っ飛ばしていた。
しかーし!僕は見逃さなかった。そんな山あいの谷間に小規模な湿地林が見えたのだ。
バイクを止め、引き寄せられるようにその湿地林に入っていった。
林の入り口から一歩、二歩・・・何歩目かにはピチャッと水溜りを踏んづけてさらに奥へ入って・・・
(回想)
いや・・・ちょっと待てよ。たしか何歩か手前で僕は水溜りをピチャッとやったな?
うん、そう間違いない、ピチャッとやった。やったけど・・・
え〜〜!?それはどう考えてもないでしょ〜!?水ほとんど無かったよ。愛用のアクアソックだって全然濡れてないし・・・。
でも、もしもって事があったら・・・あったら笑っちゃうよな、だってあんなに浅いんだもん。
もしいるとすればなんだ?・・・いや分かってる、多分いないよ、多分いないと思うけど一回だけ網入れてみようか、試しにね。
どうせ今までだって採れてないんだから、いなくったって、あーやっぱいないや、で済むじゃん?(回想終わり)
ん!?
・・・・・・・・・・・・・・・い〜〜た〜〜よ〜〜〜・・・・・・・・・・・
赤黒いヌルっとしたものが〜・・・2匹いっぺんだよ。
やっぱりなあー!いるんじゃないかと思ったんだ、さ・い・しょ・か・ら。
しかしホントの話この浅さは尋常じゃないぞ!この雨続きでこの浅さとはどういうことなんだ?
しかも生息密度はえらく高い。取り残されたのか?いや違うなあ。
湿地林というのは結構水位が安定しているんだろうか?こんな浅い場所で産卵しているのだろうか?
水質は明らかに低湿地帯のそれであるが、水色は全くのクリアウォーターだ、驚きである。
違う時期にも何回か行ってみて調べないとちょっと分からないかな。
鮮やかな赤だ!オスかな・・・?
もういっちょ!
この赤ベタ、赤みが強く(ルティランスほどではないが)うっすらとブルーがかっている。
体側には黒点があったり無かったり、間違いなく個体差である。
もう少しよーく見れば背鰭が広いパンカランブンタイプだということがわかる。これは重要だ!
ということはスカダナ、ここはカプアス系ではなくパンカランブンやバンカ島に関係が深い地域ということになるだろう。
そうなるともしチョコグラ系が見つかるとすれば、セラタだ!
ただし結局今回はスファエリクティス属は見つけられず次回の宿題となった。
PS:このベタは標本にしコテラット博士に送って鑑定していただきました。
博士によると若干の違いはあるが、sp.パンカランブンによく似ている、ということです。
まあまずパンカランブンさえ学名がついていないのだから、このベタはそのあとになるでしょう。
ただsp.パンカランブンに近縁であることは間違いないことでしょう。
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