西カリマンタン(南部バージョン)

今回の採集旅行(2001年3〜4月)は僕のホームリバーであるカプアスを離れ、西カリマンタンの南部を攻める計画を立てた。 カプアスが終わったわけではないけれど、たまには気分を変えてみようという事で・・・。
西カリマンタン南部エリアは1997年の採集以来で、その時にナンガタヤップで採集したリコリスの再採集と、細かいデータの取りなおしも目的の一つだ。

カプアスでの採集を駆け足で済ませた僕は、ポンティアナックに戻りクタパンへのチケットを予約した。 西カリマンタンの南部への玄関口はこのクタパンである。ポンティアナックからは船か飛行機で入れる。 ちなみに中央カリマンタンからのパンカランブンからも西の南部エリアへ入れる。

クタパンの安宿についた僕はさっそく地図を広げ始める。僕は地図を眺めてあれこれ考えるのが大好きなのだ。 一種の妄想癖かもしれないが、いろいろシュミレーションしてみるのがなんとも楽しいのだ。 採集はただ闇雲に網を振るっても採れないし、採れたとしても大して面白くない。
最近は自分なりのテーマを決め、今までの情報と経験から、ある程度の予想を立てて採集に望んでいる。 そうすれば見えなかったことも見えてくるし、例えば予想に反した場所で思わぬ魚を採集したりすると、「こんな所にも生息してるんだ〜」といったような、その魚に対する認識の幅も広がるというもんだ。
ただ勘違いしちゃいけないのは、予想するという事と、先入観を持って見るという事は全く違う。 自然を相手にするときは、自分をいつもニュートラルに保つのが基本だ。 さて話がそれてしまったが僕の今回の採集旅行のテーマはこうだ!

1.チョコグラとセラタの境界線はいったいどこ?

2.フォーシイタイプの生息地は連続しているか?

3.バイランティとアクロストマの近縁種?の採集

4.オルナティカウダとパーブルスの近縁種?の採集

5.ナンガタヤップのリコリスの再採集

こんなところでどうだ!
3、4は完全に妄想の世界だ。しかし理由はある。 3、4のそれぞれの種は種類は確かに違うが、それほど遠くない類似する種類と僕は考えている。 今現在、小型でヒレが黒く染まるタイプのリコリスはこの2種類しかいないし、 オスが卵を咥えるグーラミィもこの2種類だけなのだ。この分布にお気づきだろうか。 この両種の生息地は西のカプアス区域と中央のサンピット区域に分かれているのだ! これは偶然なのか? 当然、その中間の地域(西の南部)にそれを結びつける魚が存在している、と考えるのが妥当だが、今のところそのような報告はなくぽっかりと空白地帯になっている。
この疑問を出射氏に投げかけたところ、 「生息地が連続していれば別種にはならないのではないか?空白地帯があるからこそ別種になったんだろう」とヒジョーに鋭い意見。
いずれにしてもこのカプアス区域とサンピット区域、昔何らかの関わりがあったと読めるのではないでしょうか。 こんな事は通常の紙面などには書けるようなものではないが、インターネットということで皆さん広い心で許してやってください。笑
聞きなれない地名や河川名が出てくると思いますが地図を用意して調べてみてください。

トゥンバンティティを流れるプサグアン川

さてクタパンからはとりあえずプサグアン(Pesaguan)水系のトゥンバンティティ(Tumbantiti)へ向かうことにした。 ここ何日か太陽が出ているからだ。ここへ行く道は非常に悪く、雨が続くとバスがスタックして厄介だということなのだ。 それでも何度も横転しそうになりバスを何度も降りなくてはいけなかったが・・・。
トゥンバンティティはプサグアン川の河口から東約60km内陸に入った所にあり、 西カリマンタンと中央カリマンタンを分ける山脈の最西端辺りに位置する。

トゥンバンティティに着いた僕はさっそくあちこち探索に歩き回る。 この辺りにはクリプトが生えた美しいクリアウォーターの小川がたくさんある。

この辺りの小川に生えるクリプトコリネ

あるにはあるんだけど・・・ムムム。 ん〜いないぞう?採れるのはラスボラとヘミランフォドンばかり・・・。 おかしいなあ〜こんなにいい川だったらリコリスとかいてもいいんだけど・・・。 ベタでは唯一エディサエがわずかに採れる程度だ。やっぱこの辺は空白地帯なんだろうか? それでも聞きこみをして、探索を続けなんとかフォーシイタイプを見つけ出した! しかしそれも幼魚サイズが数匹採れた程度で生息数は非常に少なかった。 でも一匹でも確認できれば、近辺にもっといい環境の生息地が残されている可能性は十分にある。 プサグアン水系にはフォーシィタイプが存在している!

フォーシィタイプの生息地

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