ベタに限らず魚の好む生息環境というのは種類によって多種多様である。
例えばヤマメとイワナでは同じ渓流に住んでいながらも、好む生息環境は若干異なっている。
ヤマメは比較的開けた明るいところに生息しているのに対し、イワナは薄暗い岩陰にじっとしていることが多い。
ヤマメとアマゴという非常に近い近似種でさえ、水中での定置する場所が微妙に異なっているらしいのだ。
ベタにはバブルネストブリーダーとマウスブリーダーが存在するのはご承知の通りだ。
もちろん生息環境は両種異なっている、がそれだけではない。
同じバブルネスト、マウスブリードだとしても種類によって好む生息場所が異なるのだ。
だからただ生息地のジャングルへ入って、闇雲に網を振るえば狙いのベタが採れる訳ではない。
そのベタの好む生息環境を知り、それに合うような場所を探さなければ、お目当てのベタは採れないだろう。
しかもそれはかなり微妙なものなのだ。これをすべて口で説明するのは難しい。
だからたまに、「生息地へ採集旅行に行ったが見つけることが出来なかった。もう消滅してしまったんじゃないだろうか・・・」
なんて話を聞くことがあるが、今の状況からすると局地的に消滅してしまうことは十分にありえる。
しかし僕が思うにそれは探し所が悪かった事もあるだろうと思う。今でもいるところにはいるのだ。
ホントこれ微妙な場所の違いなのだ。
Betta foerschi "Mandor"の生息地
前回の採集旅行(Nov/99〜Jan/00)では初めて中部カリマンタンに入り、
フォーシィの中部カリマンタンバージョン、ベタsp.タンキリンを採集することが出来た。
そのベタsp.タンキリンの生息環境・状況は西カリマンタンのベタsp.マンドールとまったく同様であった。
僕は正直これにはけっこう驚いた。これほど離れていてもその性質は変わらないのだ。
このためこのタイプのベタの好む生息環境をある程度把握することが出来たので、改めて紹介したいと思う。
ある環境に特化した性質はこのタイプのベタ不変のものであり、言い方を変えれば融通が利かないということだ。
この性質は不幸にもこのベタを現在生存の危機にさらしている。
その生息環境はかなり特徴的だ。まず第一に湿地帯の森の中を流れるブラックウォーターであるということだ。
それも相当に濃いまるでコーヒーのような水の色だ。(一部クリアウォーターでも発見)
湧き水に端を発していることが多いようで、小川であっても水量と流れは思ったよりはある。
ここで大事なのは湿地帯の森ということだ。
大木がそびえる歩きやすい森とは違い、湿地帯の森というのはグチョグチョとして足場が悪く、
大量の落ち葉が積もっている。低木やツルが絡み合いほとんど日の射すことが無いような薄暗い森だ。
当然PHもそれなりに低く4〜5前後、小川の川幅は0.5m〜2mほどで多少の緩急の差はあるが、
思ったより流れがある。水温は26度前後だが流れがあるため若干冷たく感じる。
しかしここが一番肝心なところなのだが、この流れのある細流をフォーシィタイプのベタは好まないのだ。
このことに気づかずこの細流をずっと探していたらフォーシィを採ることは出来なかった。
それではどこにいるのだろうか・・・
現地で採集直後のBetta foerschi
この湿地森の細流の周りには水溜まりがあちこちに点在している。水深はわずか10cmほどで、水底は落ち葉で覆われている。実は細流の方ではなく、この水たまりの落ち葉の下にベタは隠れているのだ。
この小さな水溜まりに成魚2、3匹が生息している。そして一つの水溜まりから、
幼魚から若魚、卵を咥えた成魚まで、様々なサイズが採れることから、
一生このような水溜まりで過ごすと考えられる。しかしよく見るとこの水溜まりは
完全に細流と切り離されている訳ではなく、微量ながら常に新しい細流の水が流れ込んで来ている。
この辺がこのベタの水質変化や悪化への対応の弱さを表わしているような気がするのだが・・・。
何かと論議の絶えないベタなのだが、どのタイプでもとにかくキレイで魅力のある種類であることは間違いない。
メタリックグリーンの体色、真っ赤な2本の鰓のライン。想像して見てください!
こんなのを現地の薄暗い森の中ですくった時の胸の高鳴り・・・ゾクゾクしますねえ。
最近この手のベタの繁殖報告が相次いでいます。産地のはっきりとした魚を飼っている人は、
しっかりと管理し、累代繁殖まで成功させてもらいたいと思います。
日本軍マンドールでインドネシア人を2000人虐殺
PS:マンドールにはこのようなものが建っている。・・・昔のこと?関係の無いことか?
インドネシアで魚を採る時・・・それはただの魚採集の旅で終わらせることは出来ない!
日本人はここを訪れる時、気をつけたほうがいい。
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